大切な取引先の、年に一度の特別な記念日「周年祝い」。
心からのお祝いと、今後の更なる発展を願う気持ちを伝えたい。
そんな時、多くの方が贈答花の最高峰である「胡蝶蘭」を思い浮かべるのではないでしょうか。
しかし、いざ選ぶとなると「相場はどれくらい?」「どんな色や大きさが適切?」「立て札の書き方は?」など、次々と疑問が湧いてきて、不安になってしまうお気持ち、よく分かります。
こんにちは。
私は元大手商社で15年間、役員秘書として勤務し、数えきれないほどの贈答花の手配を担当してまいりました。
贈る側の悩み、そして贈られる側の本音、その両方を間近で見てきた経験から、皆様にお伝えしたいことがあります。
それは、胡蝶蘭は、単なる「お祝いの品」ではないということです。
選び方や贈り方一つで、相手に与える印象は大きく変わります。
正しく選べば、それは貴社の品格と心遣いを伝える、最高のコミュニケーションツールになるのです。
この記事では、私が秘書時代に培った知識と経験のすべてを注ぎ込み、失敗しない周年祝いの胡蝶蘭選びと、知っておくべきビジネスマナーを徹底的に解説します。
読み終える頃には、あなたは自信を持って、最高の胡蝶蘭を贈れるようになっているはずです。
さあ、一緒に見ていきましょう。
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なぜ周年祝いの贈り物に「胡蝶蘭」が選ばれ続けるのか?
数あるお祝いの品の中で、なぜ胡蝶蘭はこれほどまでにビジネスシーンで不動の地位を築いているのでしょうか。
それには、見た目の美しさだけではない、明確な理由があります。
縁起の良い花言葉「幸福が飛んでくる」が門出を祝う
胡蝶蘭には「幸福が飛んでくる」という、非常におめでたい花言葉があります。
蝶が舞うような花の姿から、そう名付けられたと言われています。
これからの事業の繁栄や、新たな一年への飛躍を願う周年祝いのメッセージとして、これ以上ふさわしい花言葉はないでしょう。
この花言葉に、私たちのお祝いの気持ちを託すことができるのです。
「幸せが根付く」とされる鉢植えは、事業の発展を願う象徴
お祝い花には切り花のアレンジメントもありますが、周年祝いには鉢植えの胡蝶蘭が選ばれます。
それは、鉢に根を張る姿から「幸せが根付く」「その場に根付いて発展する」という意味合いに通じるからです。
企業のさらなる成長と、地域社会への貢献が続くことを願う気持ちを、鉢植えの胡蝶蘭が静かに、しかし力強く代弁してくれます。
圧倒的な存在感と、ビジネスシーンにふさわしい品格
オフィスや式典会場にずらりと並んだお祝い花の中でも、胡蝶蘭が放つオーラは格別です。
凛とした花びらが幾重にも連なる姿は、まさに圧巻の一言。
私が秘書として働いていた頃も、エントランスに届けられた胡蝶蘭の鉢が並ぶと、社内全体が華やかで、おめでたい雰囲気に包まれたことをよく覚えています。
その品格と存在感は、お祝いの気持ちを最高級の形で表現してくれます。
香りや花粉が少なく、どんな場所にも配慮できる
胡蝶蘭がビジネスシーンで重宝される、非常に実用的な理由がこれです。
胡蝶蘭は、花の香りや花粉がほとんどありません。
そのため、飲食店や医療機関、人の出入りが多いオフィスなど、場所を選ばずに贈ることができます。
アレルギーなどを心配する必要もなく、どんな業種の相手にも安心して贈れるという点は、贈る側にとって大きなメリットと言えるでしょう。
【関係性で決まる】周年祝いに贈る胡蝶蘭の価格相場
胡蝶蘭を選ぶ上で、まず気になるのが価格相場ではないでしょうか。
安すぎては失礼にあたり、かといって高価すぎても相手に気を遣わせてしまう可能性があります。
ここでは、相手との関係性に応じた適切な価格相場をご紹介します。
一般的な取引先へのお祝い(1万円~3万円)
日頃からお付き合いのある、一般的な取引先への周年祝いであれば、この価格帯が最もスタンダードです。
法人贈答で定番とされる「3本立ち」の、見栄えのする胡蝶蘭を選ぶことができます。
大きすぎず、小さすぎず、オフィスにも飾りやすいサイズ感で、お祝いの気持ちを過不足なく伝えることができるでしょう。
多くの企業がこの価格帯で贈り合っているため、悪目立ちすることもなく、安心してお祝いの気持ちを表現できます。
特に重要な取引先へのお祝い(3万円~5万円)
長年にわたりお世話になっているパートナー企業や、会社の根幹を支える重要な取引先には、ワンランク上の胡蝶蘭で感謝の気持ちを伝えたいものです。
この価格帯になると、花の数(輪数)が多い3本立ちや、より豪華な5本立ちの胡蝶蘭を選ぶことができます。
見た目のボリューム感が格段にアップし、数多く届くお祝い花の中でも、ひときわ目を引く存在になるでしょう。
「貴社を特別に想っています」というメッセージが、言葉以上に伝わるはずです。
創業記念や特別なお祝い(5万円以上)
創業50周年や100周年といった大きな節目のお祝いや、親子三代にわたってお世話になっているような、極めて特別な関係性の相手には、最高級の胡蝶蘭でお祝いの気持ちを届けましょう。
この価格帯では、輪数が非常に多い5本立ちや7本立ち、あるいは希少な色の胡蝶蘭など、最高品質のものが選択肢に入ります。
秘書時代、このような立派な胡蝶蘭が届くと、役員室に飾られ、送り主の企業との強い絆の象徴として、長い間大切にされていたのを思い出します。
今後の関係性をより強固にするための、戦略的な贈り物とも言えるでしょう。
元秘書が伝授する!失敗しない胡蝶蘭選び、5つのチェックポイント
価格相場を理解したところで、次はいよいよ具体的な胡蝶蘭の選び方です。
同じ価格帯でも、ポイントを知っているかどうかで、その価値は大きく変わります。
私が秘書時代に必ずチェックしていた、5つの重要ポイントを伝授します。
ポイント1:見た目の印象を左右する「本数(〜本立ち)」の選び方
「本立ち」とは、1つの鉢から出ている茎の本数のことです。
一般的に、この本数が多ければ多いほど、ボリュームが出て豪華な印象になります。
- 3本立ち: 最もスタンダードで、あらゆるビジネスシーンに適しています。迷ったらまずこれを選べば間違いありません。
- 5本立ち: 3本立ちよりも一回り大きく、豪華さが増します。重要な取引先へのお祝いに最適です。
- 7本立ち以上: 大変豪華で、特別な節目のお祝いや、広いスペースが確保できる式典会場などに贈ると喜ばれます。
ビジネスシーンでは、割り切れる偶数よりも、縁起が良いとされる「奇数」の本数が好まれる傾向にあります。
ポイント2:豪華さを決める「輪数(りんすう)」の目安
「輪数」とは、1本の茎についている花の数のことです。
あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、実はこれが胡蝶蘭の価値と豪華さを決める、非常に重要な要素なのです。
同じ3本立ちでも、1本あたりの輪数が多ければ多いほど、花の密度が高く、満開になったときの見栄えが全く異なります。
一般的な3本立ちの胡蝶蘭は、つぼみを含めて1本あたり10輪前後、合計で30輪程度です。
これが3本立ちで合計36輪以上になると、かなり高品質で豪華な印象になります。
オンラインショップなどで選ぶ際は、必ず「輪数」の記載を確認するようにしましょう。
ポイント3:コーポレートカラーで差がつく「色」の選び方
胡蝶蘭の色選びも、センスが問われるポイントです。
それぞれの色が持つ意味や印象を知っておきましょう。
- 白: 最もフォーマルで、清廉潔白なイメージ。どんなお祝いのシーンにも間違いのない、定番中の定番です。迷ったら白をおすすめします。
- ピンク: 「あなたを愛しています」という花言葉もあり、優しく華やかな印象を与えます。女性経営者の企業や、アパレル、美容関係の企業へのお祝いに喜ばれます。
- 白赤リップ: 白い花びらの中心が赤い品種。紅白でおめでたい印象が強く、周年祝いにも人気があります。
少し上級者向けですが、相手のコーポレートカラーやロゴの色に合わせて胡蝶蘭の色を選ぶと、「私たちのことをよく理解してくれている」と、非常に喜ばれることがあります。
さりげない心遣いが、他社との差別化に繋がります。
ポイント4:花の鮮度と品質の見極め方
せっかく贈るのであれば、一日でも長く美しい花を楽しんでもらいたいですよね。
花の鮮度を見極める簡単なポイントがあります。
- 花びらにハリと厚みがあるか
- 花が正面を向き、並びが整っているか
- 葉が肉厚で、ツヤがあるか
- 茎の根元から先端にかけて、数輪のつぼみがついているか
特に最後の「つぼみ」は重要です。
すべてが満開の花は一見豪華ですが、すぐに枯れ始めてしまいます。
いくつかのつぼみがついている鉢は、これから次々と花が咲いていくため、長く楽しむことができる「鮮度の良い株」である証拠です。
ポイント5:信頼できるフラワーショップの選び方
ここまでのポイントをすべてクリアする胡蝶蘭を見つけるには、信頼できるショップ選びが不可欠です。
特に法人向けの贈答花を専門に扱っているショップは、品質管理やビジネスマナーへの理解度が高く、安心して任せることができます。
ショップを選ぶ際は、以下の点を確認してみてください。
- 法人向けの胡蝶蘭の販売実績が豊富か
- 立て札やラッピングのサービスが充実しているか
- 配送前に、実際に贈る商品の写真を送ってくれるサービスがあるか
- 問い合わせへの対応が丁寧で迅速か
特に「写真送付サービス」は、自分が選んだ胡蝶蘭がどのような状態で相手に届くのかを事前に確認できるため、非常に安心感があります。
これで完璧!お祝いの気持ちを伝えるためのビジネスマナー
最高の胡蝶蘭を選んだら、最後の仕上げは「マナー」です。
どんなに立派な贈り物も、マナーを欠いては台無しになってしまいます。
相手への心遣いを完璧な形で届けるための、重要なマナーを確認しましょう。
贈り先の迷惑にならない、最適なタイミングとは?
お祝いを贈るタイミングは、早すぎても遅すぎてもいけません。
- 周年記念の式典やパーティーがある場合:
開催日の前日、もしくは当日の午前中に会場に届くように手配するのがベストです。会場の準備の邪魔にならないよう、時間指定をするとより丁寧です。 - 特に式典などがない場合:
記念日の1週間前から、当日の午前中までに届くように手配しましょう。会社の営業日を確認し、担当者の方が確実に受け取れる日を選ぶ配慮も大切です。
立て札の正しい書き方【そのまま使えるテンプレート付き】
胡蝶蘭に添える立て札は、「誰からのお祝いか」を明確にするための名刺のようなものです。
記載すべき内容は、基本的に以下の3点です。
- お祝いの言葉(祝詞): 「祝」「御祝」など
- 贈り主の名前: 「会社名」「役職名+氏名」
- (任意)贈り先の名前: 「会社名」
お祝いの言葉は、目立つように赤字で書くことも一般的です。
以下に、そのまま使えるテンプレートをいくつかご紹介します。
【基本形】
祝
創立10周年
株式会社〇〇
代表取締役 〇〇 〇〇【贈り先名を入れる場合】
株式会社△△ 様祝 創立20周年
株式会社〇〇
代表取締役 〇〇 〇〇【連名の場合】
祝
設立5周年
株式会社〇〇
営業部一同
メッセージカードで、もう一歩踏み込んだ気持ちを伝える
立て札はフォーマルなものですが、別途メッセージカードを添えることで、よりパーソナルで温かい気持ちを伝えることができます。
長文である必要はありません。日頃の感謝や、今後の発展を願う一言を添えるだけで、印象はぐっと良くなります。
【メッセージカード文例】
創立10周年、誠におめでとうございます。
貴社の益々のご発展を心よりお祈り申し上げます。
今後とも変わらぬご厚誼を賜りますよう、お願い申し上げます。
意外と見落としがち?配送と設置場所への配慮
胡蝶蘭は大きく、デリケートな贈り物です。
配送先がビルの高層階であったり、エントランスから執務室まで距離があったりする場合、受け取った方が運ぶのに苦労されるケースがあります。
可能であれば、フラワーショップに依頼し、設置場所まで運んでもらえるサービスを利用すると、非常にスマートです。
また、赤一色のラッピングは「赤字」を連想させるため、避けるのがビジネスマナーとされています。ゴールドやグリーンなど、上品な色のラッピングを選びましょう。
周年祝いの胡蝶蘭に関する、よくある質問(Q&A)
最後に、お客様からよくいただく質問とその回答をまとめました。
あなたの最後の不安を、ここで解消しておきましょう。
Q. 相手が胡蝶蘭の置き場所に困らないか心配です…
A. ご心配はもっともです。特に、オフィスのスペースが限られている場合、大きな胡蝶蘭はかえってご迷惑になる可能性もあります。
その場合は、「ミディ胡蝶蘭」という選択肢はいかがでしょうか。
ミディ胡蝶蘭は、一般的な胡蝶蘭よりも一回りコンパクトで、受付カウンターやデスクにも飾りやすいサイズです。品格はそのままに、省スペースで楽しめるため、近年非常に人気が高まっています。
Q. 他の会社からのお祝いと被ってしまわないか不安です
A. 周年祝いには、多くの会社から白い胡蝶蘭が届くことが予想されます。
そこで差をつけるなら、先ほどご紹介した「色」で個性を出すのがおすすめです。白赤リップや淡いピンクの胡蝶蘭は、白い花の中に並んだ時にほどよく目立ち、印象に残ります。
また、ラッピングの色やデザインにこだわるのも良い方法です。
Q. 周年祝いのお返しは必要なのでしょうか?
A. 基本的に、ビジネスシーンにおける周年祝いへのお返し(品物)は不要とされています。
後日、お礼状を送るのが一般的です。
ですから、相手にお返しの気遣いをさせることなく、純粋にお祝いの気持ちとして受け取ってもらえるのが胡蝶蘭の良いところでもあります。
まとめ
この記事では、失敗しない周年祝いの胡蝶蘭選びと、知っておくべきビジネスマナーについて、私の秘書としての経験を交えながら解説してきました。
最後に、大切なポイントをもう一度振り返りましょう。
- 胡蝶蘭が選ばれるのは、縁起の良い花言葉や品格、実用性があるから
- 価格相場は関係性で決める(1万円〜5万円以上)
- 選ぶ際は「本数」「輪数」「色」「鮮度」「ショップ」の5点をチェック
- 贈るタイミングや立て札、ラッピングなどのマナーを徹底する
- 相手の状況を考え、サイズや色で心遣いを示す
胡蝶蘭は、単なる美しい花ではありません。
それは、貴社の祝う気持ち、日頃の感謝、そして今後の良好な関係を築きたいという願いを形にするための、非常にパワフルなツールです。
この記事で得た知識を武器に、自信を持って最高の一鉢を選んでください。
あなたの心からの「おめでとう」が、美しい胡蝶蘭と共に相手の心に深く届き、両社の絆をより一層強いものにすることを、心から願っています。