「球根を買いそびれたけれど、11月ではもう遅いですよね?」
毎年この時期になると、お店でよく聞かれる質問です。
球根を手に取ったまま、遅いかもしれないからと棚に戻してしまう方もいます。
花屋で12年働いている川村 彩です。
関東より西にお住まいなら、11月はむしろ植えどき。
この記事では、遅くない理由と売り場での球根の選び方、プランターへの植え方、春までの世話をお伝えします。
11月に植えても遅くない理由
チューリップは「秋に植える花」と覚えている方が多く、10月を過ぎると焦る気持ちはよく分かります。
ただ、早ければ早いほどいいわけでもありません。
まだ暖かい土は球根にとって居心地が悪い
島根県農業技術センターの研究報告によると、チューリップの球根腐敗病は土の温度が15℃以下では見られず、20℃以上で見られました。
土が湿っていると、さらに出やすくなるそうです。
この研究は植える時期を比べたものではありません。
それでも、暖かい土に球根を入れて水をたっぷりあげる作業が、球根にとって安心とは言いにくいことは分かります。
私も以前、暑さの残る10月上旬に植えて、春になっても芽が出ない鉢を作ったことがあります。
掘り返した球根は、指で押すとぶよぶよに腐っていました。
必要なのは「2か月以上の寒さ」
チューリップは冬の寒さにあたって、はじめて春に芽を伸ばす花です。
サカタのタネが監修した解説でも、植えたあと2か月以上寒さに当てないと芽が出ないとされ、遅くとも年内に植えるよう勧められています。
11月に植えれば、12月から2月まで寒さにあたる期間は十分あります。
焦って暑さの残る日に植えるより、涼しくなるのを待つほうが理にかなっています。
地域別の植えどきを確認する
ただし、「11月がちょうどいい」のは主に関東より西の話です。
寒い地域では、もう少し早く植え始めます。
アイリスオーヤマの解説にある目安をまとめると、次のようになります。
| 地域 | 植えどきの目安 |
|---|---|
| 北海道・東北 | 10月上旬〜下旬以降 |
| 北陸・日本海側 | 10月下旬〜11月上旬以降 |
| 関東・東海 | 11月上旬以降 |
| 九州 | 11月下旬以降 |
同じ解説では「紅葉が見頃になる頃」という覚え方も紹介されています。
カレンダーより、朝晩の冷え込みで判断するほうが確実です。
北海道や東北でまだ植えていない方は、地面が凍る前に済ませてしまいましょう。
11月の売り場で失敗しない球根の選び方
11月の売り場は、選べる品種が減っている代わりに、お店によっては値下げが始まっていることもあります。
お得な時期ですが、9月から店頭に並んでいた球根も混ざっているので、買う前に確かめてください。
手に持って、軽く押して確かめる
袋入りでも、外から触れるものは手に取ってみましょう。
私がお客様にお伝えしているのは次の4点です。
- 大きさの割に、持つとずっしり重い
- 指で軽く押してもへこまない
- 傷やカビがない
- 表面がカサカサで軽いものは避ける
外側の茶色い皮がはがれかけていても、中身がしっかりしていれば問題ありません。
新潟市のチューリップの育て方でも、皮を剥くかどうかは生育に影響せず、無理に剥くと傷がついて腐ることがあるとされています。
そのまま植えてください。
数と色は欲張らない
初めてなら、1つのプランターに1品種がおすすめです。
品種によって咲く時期や背丈が違うので、混ぜると「片方が咲いたころにもう片方が終わる」ということが起こります。
球根の数は、新潟市の手引きでは1つのプランターに10球です。
少しぎゅっと詰まって見えるくらいのほうが、咲いたときに豪華になります。
プランターに植える手順
地植えより土の用意が楽で、ベランダでも育てられるので、初めての方にはプランターをすすめています。
用意するものと植え方
用意するのは、球根と深さ20cm以上のプランター、草花用の培養土です。
肥料入りの培養土なら、肥料を別に足さなくても大丈夫です。
土そのものについては「土の選び方と肥料の基本」も参考にしてください。
- プランターに土を入れる(球根にかぶせる分を残しておく)
- 球根のとがったほうを上にして、3〜5cmの間隔で並べる
- 球根の頭に3cmほどかぶるまで土を足す(土の表面が縁の3cmほど下にくるくらいまで)
- 底から流れ出るまで水をあげる
球根を上から見ると、丸い面と平らな面があります。
平らな面から最初の葉が出るので、向きをそろえて並べると、葉が重ならず見た目が整います。
深さは地植えと同じにしない
調べるほど混乱するのが、深さです。
情報源によって書いてあることが違いますが、これは地植えとプランターの違いが大きいと私は考えています。
| 植え方 | 深さの目安 | 球根の間隔 |
|---|---|---|
| 地植え | 土の表面から10cm程度 | 5〜10cm |
| プランター | 球根の頭に土が3cmほどかぶる程度 | 3〜5cm |
プランターで深く植えすぎると、球根の下に根を伸ばす土が足りなくなります。
逆に浅すぎると根がうまく張らないので、頭がのぞいたままにはしないでください。
新潟市の手引きは「球根の先が土に被るくらい」、アイリスオーヤマは「上に3〜6cm」としています。
私はその間をとって3cmほどにしています。
植えたあと、春までの世話
ここからは手がかかりません。
失敗するとしたら、置き場所と水切れのどちらかです。
置き場所は日の当たる屋外のまま
いちばん多い失敗は、寒そうだからと室内や玄関に入れてしまうことです。
冬の寒さにあてないと育たないので、日当たりのよい屋外に置きます。
新潟市の手引きでは、軒下や玄関内、エアコンの室外機の近くも避けるよう書かれています。
雪が積もってもそのままで構いません。
ベランダで雨が当たらない場所に置いている方は、次の水やりだけ気をつけてください。
芽が出なくても水は止めない
地上には何も見えない時期でも、土の中では根が伸びています。
プランターは乾きやすく、水切れさせると花が咲かないこともあります。
土の表面が乾いたらたっぷりあげて、受け皿にたまった水は捨てます。
冬の水やりは、凍らないように暖かい午前中が向いています。
基本の考え方は「水やりのコツ」にまとめています。
冬のあいだによくある困りごと
冬から春にかけて、よく相談されるのは次の2つです。
球根が土から浮き上がってきたら、根が張って押し上げられた状態なので、上から土を足せば大丈夫です。
カラスやネズミが球根を狙う地域では、割りばしを数本立てて糸を斜めに張っておくと、掘り返されにくくなります。
12月や年明けになってしまったら
「この記事を見たときにはもう12月だった」という方もいると思うので、その場合の考え方も書いておきます。
12月なら迷わず植える
先ほどの通り、目安は「遅くとも年内」です。
12月でも、球根が傷んでいなければ植えてください。
冬のうちに寒さにあたる時間を確保できます。
年明けの球根は、咲けばもうけもの
年を越すと、寒さにあたる期間が足りなくなる心配が出てきます。
1月に植えてどのくらい咲くかは、はっきりしたデータを見つけられませんでした。
残っていた球根を試しに植えるのは楽しいですが、期待はほどほどに。
どうしても今年の春に咲かせたいなら、春先に店頭に並ぶつぼみつきのポット苗を買うのが確実です。
プランターに植え替えるだけで、すぐ楽しめます。
まとめ
関東より西なら、11月のチューリップはまったく遅くありません。
土が冷えてから植えるほうが、球根にとっても安心です。
売り場では重くて硬い球根を選び、プランターには頭に3cmほど土がかぶる深さで植えます。
あとは屋外の日なたに置いて、土が乾いたら水をあげるだけです。
今週末、紅葉を見に行ったついでに球根を一袋買って帰る。
それくらいの気軽さで始めて、春に「植えてよかった」と思ってもらえたらうれしいです。
